「キャンセル料を請求されたが、金額に納得がいかない」「予約を取り消したのに請求が来ない。このまま放っておいていいのか」。ホテルのキャンセル料をめぐる不安は、たいていこの2つのどちらかです。
この記事は、e-Gov法令検索の消費者契約法・民法の条文と、観光庁が公表しているモデル宿泊約款を実際に開いて確認し、書かれているとおりにまとめたものです。「払わなくて大丈夫」といった無責任な断定はしません(確認したページのURLは記事末尾に記載しています)。
キャンセル料は契約にもとづく支払い義務です。モデル宿泊約款では「違約金」と呼ばれており、支払わないという選択肢は法律上用意されていません。ただし金額には上限のルールがあり、「平均的な損害の額」を超える部分は無効とされています(消費者契約法第9条第1項第1号)。
請求された側は算定根拠の説明を求めることができます。事業者には説明の努力義務があるためです(同条第2項)。なお「請求が来ない」は請求権が消えたという意味ではありません。債権の消滅時効は権利を行使できると知った時から5年です(民法第166条第1項第1号)。
次の予約でこの心配をしないためには、無料キャンセルの期限があるプランを選ぶのがいちばん確実です。
キャンセル料は「罰金」ではなく契約上の違約金
まず位置づけを整理します。国が示すモデル宿泊約款では、キャンセル料は第6条第2項の違約金として定められています。
当ホテル(館)は、宿泊客がその責めに帰すべき事由により宿泊契約の全部又は一部を解除した場合(中略)は、別表第2に掲げるところにより、違約金を申し受けます。
モデル宿泊約款 第6条第2項(観光庁)

予約が成立した時点で宿泊契約が成立しており(同第3条)、その契約を自分の都合で解除したときに発生するのが違約金です。支払いの根拠は「ホテルが怒っているから」ではなく、予約時に同意した契約の条項にあります。だから「払わない」は、契約上の債務を履行しないという扱いになります。
条文の「その責めに帰すべき事由により」という部分にも意味があります。宿泊客側の事情で解除したときの定めであって、宿の側が泊められない場合は別の条項で扱われる、という切り分けです。「誰の側の事情か」で結論が変わる仕組みになっています。
払わずにいると実際どうなるか

予約の取り方別・請求のされ方
(スマホは横スクロール可)
| 予約の取り方 | キャンセル料の受け取られ方 | 放置した場合に起きること |
|---|---|---|
| 事前カード決済 | すでに支払い済みの金額から充当される | 「払わない」という状態がそもそも作れない。返金額が減る形になる |
| 現地払い・カード登録あり | 登録したカードに請求されることがある | 予約時の規定しだい。明細を見て初めて気づくことがある |
| 現地払い・登録なし | 施設から連絡・請求書が届く | 連絡が来る。応じない場合、施設側は法的手続きを取ることができる |
この表で押さえておきたいのは、事前カード決済の場合は「払う・払わない」を選ぶ余地がそもそもないことです。すでに預けたお金から差し引かれ、残りが返金される形になります。争点になるとすれば返金額のほうで、支払いを止めることではありません。
よくある誤解が「請求が来ないなら、もう終わったということだろう」というものです。しかし請求が来ないのは、施設が請求していないだけかもしれません。債権の消滅時効について、民法第166条第1項は次のように定めています。
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。/一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。/二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
民法 第166条第1項(e-Gov法令検索)
つまり数か月連絡がないこと自体には、法律上の意味はありません。あとから請求が届く可能性は残ります。「逃げ切れるか」を考えるより、金額が妥当かどうかを確かめるほうが現実的です。
金額に納得できないときの手順
キャンセル料は施設が決めますが、上限は法律が定めています。消費者契約法第9条第1項第1号は、次の部分を無効としています。
当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの(無効となるのは)当該超える部分
消費者契約法 第9条第1項第1号(e-Gov法令検索)

読み方に注意が必要なのは、無効になるのは「超える部分」だけという点です。高すぎると感じたからといって条項ごと無効になるわけではなく、平均的な損害の範囲までは有効に残ります。全額を拒める話ではありません。
さらに同条第2項では、事業者に説明の努力義務が課されています。
事業者は、消費者に対し、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項に基づき損害賠償又は違約金の支払を請求する場合において、当該消費者から説明を求められたときは、損害賠償の額の予定又は違約金の算定の根拠(中略)の概要を説明するよう努めなければならない。
消費者契約法 第9条第2項(e-Gov法令検索)
説明を求めるのは、クレームではなく法律が想定している行動だということです。感情的にならずに「算定根拠の概要を教えてください」と伝えれば足ります。
納得できないときにやること(順番)
(スマホは横スクロール可)
| 順番 | やること | 根拠・ねらい |
|---|---|---|
| 1 | 予約時の画面・確認メール・施設の宿泊約款で、キャンセル規定の該当箇所を探す | そもそも規定どおりの金額かを確かめる |
| 2 | 施設に「算定根拠の概要を教えてください」と伝える | 消費者契約法第9条第2項(事業者の努力義務) |
| 3 | それでも折り合わなければ、消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談する | 第三者を入れて整理する。支払いを自己判断で止める前に相談する |
手順1を飛ばさないことが大切です。請求額が規定どおりなら、そもそも争点は「規定そのものが高すぎるか」に移ります。規定と違う金額なら、単純な計算間違いの可能性もあります。どちらなのかで、その先の話し方が変わります。
本記事は法令とモデル約款の記載を紹介するもので、個別のケースについての法的なアドバイスではありません。実際に請求を受けている場合の判断は、施設の約款・予約時の条件・当日の事情によって変わります。判断に迷う場合は消費生活センターや弁護士にご相談ください。
いちばん損なのは「連絡しないこと」
言いにくさから連絡を先延ばしにするのは、金額の面で不利になりやすい行動です。モデル宿泊約款は、連絡なしの不着をこう扱います。
当ホテル(館)は、宿泊客が連絡をしないで宿泊日当日の午後 時(あらかじめ到着予定時刻が明示されている場合は、その時刻を 時間経過した時刻)になっても到着しないときは、その宿泊契約は宿泊客により解除されたものとみなし処理することがあります。
モデル宿泊約款 第6条第3項(観光庁)

この場合に当てはまるのは、違約金の表でいちばん高い「不泊」の欄です。行けないと分かった時点で取り消せば、その日に対応する欄の金額で済む可能性があるのに、黙っていることで自分から最大額の欄に移動してしまう、という構図になります。
金額の感覚をつかむために例で考えます。1泊1万円の予約で、当日キャンセルが80%、不泊が100%と定められていたとすると、その差は2,000円です。2名なら4,000円、連泊ならさらに広がります。電話1本の差でこれだけ変わる、という理解でよいと思います。
そもそも発生させないためにできること
予定が動く可能性がある旅行なら、料金の安さだけで選ばないほうが結果的に得をします。プランのキャンセル規定は予約前に必ず表示されているので、「何日前まで無料か」を見てから決めることをおすすめします。
同じ部屋でも、変更不可のプランと前日まで無料のプランが数百円差で並んでいることがあります。予定が固まっていない旅行では、その差額はキャンセルするかもしれない権利の値段です。1泊1万円の予約で当日キャンセルが80%なら、失う可能性があるのは8,000円。数百円の上乗せで避けられるなら、比べる価値はあります。
よくある質問
この記事の出典
本記事の内容は、以下の公的な資料を開いて確認した記載にもとづいています。法令は改正されることがあり、約款は施設ごとに異なります。
※本記事はキャンセル料の金額を個別に実測したものではありません。金額は宿泊施設・プランごとに異なります。


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