ホテルの予約を取り消すとき、いちばん気になるのは「いつからキャンセル料がかかるのか」「何日前なら無料なのか」だと思います。ネットで調べると「3日前から30%」「前日は50%」といった数字が並びますが、その数字がどこから来たものなのかまで書いてある記事はほとんどありません。
この記事は、国(観光庁)が公表しているモデル宿泊約款のPDFと、e-Gov法令検索の消費者契約法の条文を実際に開いて確認し、原文にそってまとめたものです。体験談やまとめ記事の引き写しではありません(確認したページのURLは記事末尾に記載しています)。
「何日前から何%」という全国共通のルールは存在しません。国のモデル宿泊約款にある違約金の表は、日数の枠だけが決まっていてパーセントの欄は空欄の様式になっています。その空欄を埋めるのは宿泊施設で、さらに予約サイトのプランに条件が付いていればそちらが優先されます(約款第1条第2項)。
連絡せずに当日到着しなかった場合は、宿泊客のほうから解除したものとみなして処理されることがあります(約款第6条第3項)。一方で、高すぎるキャンセル料は「平均的な損害の額」を超える部分が無効とされ(消費者契約法第9条第1項第1号)、事業者には求められたら算定根拠の概要を説明する努力義務があります(同条第2項)。
「何日前から」を決めているのは法律ではなく宿泊施設
ホテルや旅館の宿泊契約には「宿泊約款」があり、その手本として国が示しているのがモデル宿泊約款(国振第416号)です。キャンセル料について定めているのは第6条第2項で、原文はこうなっています。
当ホテル(館)は、宿泊客がその責めに帰すべき事由により宿泊契約の全部又は一部を解除した場合(中略)は、別表第2に掲げるところにより、違約金を申し受けます。
モデル宿泊約款 第6条第2項(観光庁)
つまり金額そのものは「別表第2」に書いてあるということです。ところが、実際にPDFを開くと、この別表第2はパーセントの欄がすべて空欄になっています。決まっているのは「どの日を区切りにするか」という枠だけで、そこに入る数字は各施設が自分で記入する様式なのです。

モデル宿泊約款 別表第2の「日数の区切り」
(スマホは横スクロール可)
| 様式 | 表に並んでいる区切り | パーセントの欄 |
|---|---|---|
| ホテル用 | 不泊/当日/前日/9日前/20日前 | 空欄(施設が記入) |
| 旅館用 | 当日/2日前/3日前/5日前/6日前/7日前/8日前/14日前/15日前/20日前/30日前 | 空欄(施設が記入) |
この表からまず読み取れるのは、ホテルと旅館では想定されている区切りの細かさが違うということです。ホテル用は5段階なのに対し、旅館用は11段階もあり、30日前から段階が始まる様式になっています。旅館は食事の仕入れがあるため、早い段階から区切りが置かれていると考えられます。
もうひとつは、「相場は◯%」と言い切れる根拠が、国の様式のほうにはないことです。数字は施設ごとに違うので、自分が予約した施設の約款を見るしかありません。予約サイトで見たキャンセル規定と、宿の公式サイトに掲載されている約款が、そのまま突き合わせられる形になっています。
細かい点ですが、表の注記も見ておく価値があります。「契約日数が短縮した場合は、その短縮日数にかかわりなく、1日分(初日)の違約金を収受します」と書かれています。3泊の予約を1泊に縮めても、違約金の基準になるのは1日分という考え方です。予定が縮んだときに全泊分を請求されるわけではない、という点は覚えておくと安心できます。
予約サイトで取った予約は、プランの条件が優先される
じゃらんnetや楽天トラベルなどで「キャンセル無料」「返金不可」といった条件を見たことがあると思います。これは約款と矛盾しているわけではありません。モデル宿泊約款の第1条第2項に、次の定めがあるからです。
当ホテル(館)が、法令等及び慣習に反しない範囲で特約に応じたときは、前項の規定にかかわらず、その特約が優先するものとします。
モデル宿泊約款 第1条第2項(観光庁)

プランごとのキャンセル規定は、この「特約」にあたります。だから同じホテルの同じ部屋でも、早割の返金不可プランと当日まで無料のプランで、キャンセル料の発生日がまったく違うということが起こります。
順番でいえば、プランの特約が先、施設の約款が後です。ネットで「この宿は3日前から30%らしい」と調べても、自分が取ったプランに別の条件が書いてあれば、そちらが適用されます。調べる順番も、まず予約したプランの条件、次に宿の約款、という順にすると迷いません。
予約する前に見るべき場所ははっきりしています。プラン名の下にある「キャンセル規定」と、予約完了メールに書かれたキャンセルポリシーの2か所です。予定が動きそうな旅行なら、料金だけでなくここを見比べて選ぶほうが結果的に安く済みます。
連絡せずに行かなかった場合(ノーショー)はどうなる
「キャンセルの連絡をしないまま、結局泊まらなかった」というケースについても、モデル宿泊約款は定めを置いています。
当ホテル(館)は、宿泊客が連絡をしないで宿泊日当日の午後 時(あらかじめ到着予定時刻が明示されている場合は、その時刻を 時間経過した時刻)になっても到着しないときは、その宿泊契約は宿泊客により解除されたものとみなし処理することがあります。
モデル宿泊約款 第6条第3項(観光庁)

ここでも時刻の部分は空欄で、施設が記入する様式です。重要なのは扱いのほうで、連絡なしの不着は「宿泊客が解除した」とみなされ、別表第2の「不泊」の欄の違約金が適用される流れになります。連絡しなかったことで支払いを免れる仕組みにはなっていません。
逆にいえば、行けないと分かった時点で連絡するほど、当てはまる欄が手前にずれて金額が下がる可能性があるということです。気まずさから連絡を先延ばしにするのは、金額の面では損になりやすい判断です。
もうひとつ、条文が「あらかじめ到着予定時刻が明示されている場合」に触れている点にも意味があります。到着が遅れそうなときに電話を1本入れておけば、その時刻が基準になります。夜遅くなりそうな日は、遅れると分かった時点で伝えておくほうが安全です。
請求されたキャンセル料が高すぎると感じたときに使える条文
キャンセル料は施設が決めるものですが、いくらでも決めていいわけではありません。消費者契約法第9条第1項第1号は、次の部分を無効としています。
当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの(無効となるのは)当該超える部分
消費者契約法 第9条第1項第1号(e-Gov法令検索)

さらに同条第2項には、事業者側の努力義務が定められています。
事業者は、消費者に対し、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項に基づき損害賠償又は違約金の支払を請求する場合において、当該消費者から説明を求められたときは、損害賠償の額の予定又は違約金の算定の根拠(中略)の概要を説明するよう努めなければならない。
消費者契約法 第9条第2項(e-Gov法令検索)
実務的に言えば、「この金額の算定根拠を教えてください」と聞くこと自体が、法律が想定している行動だということです。ただし「平均的な損害」がいくらかは施設の事情によって変わり、消費者側が一方的に決められるものではありません。無効になるのも超える部分だけで、条項全体が消えるわけではない点にも注意してください。納得がいかないときは、自己判断で支払いを止める前に、国民生活センターや消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談してください。
本記事は法令とモデル約款の記載を紹介するもので、個別のケースについての法的なアドバイスではありません。実際に請求を受けている場合の判断は、施設の約款・予約時の条件・当日の事情によって変わります。
キャンセル料を発生させないための現実的な3つの方法
予定が動きそうなときの選び方
(スマホは横スクロール可)
| 方法 | やること | 効きかた |
|---|---|---|
| 無料期限を先に確認する | プランのキャンセル規定で「何日前まで無料か」を見てから予約する | いちばん確実。返金不可プランとの差額が無料期限の値段だと考える |
| 取り消しではなく変更にする | 日程変更で対応できないか施設・予約サイトに相談する | プランによっては変更のほうが負担が軽いことがある |
| 決まった時点で連絡する | 行けないと分かった日にすぐ取り消す | 別表第2は日が近づくほど高くなる仕組み。先延ばしは不利 |
金額でイメージすると分かりやすくなります。1泊1万円の予約で、前日キャンセルが50%、当日が80%だった場合、1日早く決めて連絡するだけで3,000円の差です。2名なら6,000円になります。迷っている時間そのものにコストがある、という見方もできます。
よくある質問
この記事の出典
本記事の内容は、以下の公的な資料を開いて確認した記載にもとづいています。約款は施設ごとに内容が異なり、法令も改正されることがあるため、手続きの前に必ず予約した施設の約款と予約確認メールをご確認ください。
※本記事はキャンセル料の金額を個別に実測したものではありません。金額は宿泊施設・プランごとに異なります。


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