シティホテル、ビジネスホテル、リゾートホテル、カプセルホテル——予約サイトにはいろいろな呼び名が並びます。では、この分類は誰が決めているのでしょうか。
調べてみると、法律が定めているのは3種類だけでした。しかもその3つは、予約サイトに並ぶ呼び名とはまったく違う切り口で分かれています。この記事は、旅館業法と旅館業法施行令をe-Gov法令検索で開いて確認した内容をもとにしています。

法律上の区分は「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」の3つです(旅館業法第2条)。
そしてシティ/ビジネス/リゾートは法律用語ではありません。業界と利用者の呼び分けにすぎず、名乗るための基準はどこにもありません。
一方でカプセルホテルは「簡易宿所営業」にあたり、政令に上下段の間隔おおむね1メートル以上という数字があります。客室の広さにも基準があり、寝台を置く客室は9㎡以上と決まっています。
名前に共通の定義がないので、選ぶときに効くのは広さと設備の表示です。すぐ探したい方はこちらから。
法律が定める3つの区分
旅館業法の第2条が、すべての宿を3つに分けています。
この法律で「旅館業」とは、旅館・ホテル営業、簡易宿所営業及び下宿営業をいう。
2 この法律で「旅館・ホテル営業」とは、施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう。
3 この法律で「簡易宿所営業」とは、宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のものをいう。
4 この法律で「下宿営業」とは、施設を設け、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業をいう。
旅館業法 第2条(e-Gov法令検索)
読み方のコツは、2項が「簡易宿所と下宿以外」という引き算で定義されている点です。つまり判断の順番は、まず共用の構造かどうか、次に1か月単位かどうか。どちらでもなければ旅館・ホテル営業になります。
整理すると次のようになります。
法律上の3区分と、当てはまる宿
(スマホは横スクロール可)
| 区分 | 条文の定義 | 当てはまる宿 |
|---|---|---|
| 旅館・ホテル営業 | 簡易宿所・下宿以外のもの | シティホテル、ビジネスホテル、リゾートホテル、旅館、民宿の多く |
| 簡易宿所営業 | 宿泊する場所を多数人で共用する構造が主のもの | カプセルホテル、ホステル、ゲストハウス、山小屋 |
| 下宿営業 | 1か月以上を単位とする宿泊料を受けるもの | 下宿 |
もうひとつ、同じ第2条第5項に「宿泊」の定義もあります。「寝具を使用して前各項の施設を利用すること」——寝具を使うかどうかが宿泊の分かれ目、という考え方です。ネットカフェやサウナが宿泊施設かどうかを分けるのも、この一文になります。
シティ・ビジネス・リゾートは法律用語ではない
ここが今回いちばんはっきりした点です。旅館業法にも施行令にも、「シティホテル」「ビジネスホテル」「リゾートホテル」という言葉は出てきません。3つとも法律上は同じ「旅館・ホテル営業」です。

つまり「ビジネスホテル」を名乗るための基準は、どこにも存在しません。一般には次のように使い分けられていますが、これは慣用であって定義ではありません。
| 呼び名 | 一般的に指しているもの |
|---|---|
| シティホテル | 都市部にあり、宴会場・レストランなどの付帯施設をもつ大型のホテル |
| ビジネスホテル | 宿泊機能に絞った、客室中心のホテル |
| リゾートホテル | 観光地にあり、滞在そのものを目的にできるホテル |
だから、同じ「ビジネスホテル」でも中身の差は大きくなります。大浴場と朝食ビュッフェを備えた施設もあれば、部屋と最低限の設備だけの施設もある。名前は期待の目安にならないということです。
予約サイトのカテゴリ分けも各社が独自に設定しているものです。名前で判断せず、客室の広さ・設備・料金で見るほうが確実——この記事の実用的な結論はここです。
カプセルホテルは「簡易宿所」。政令に具体的な数字がある
カプセルホテルは、寝る場所が並んだ空間を大勢で共用します。第2条第3項の「宿泊する場所を多数人で共用する構造」に当たるため、簡易宿所営業です。
そして施行令には、簡易宿所の構造設備の基準として次の定めがあります。
一 客室の延床面積は、三十三平方メートル((中略)宿泊者の数を十人未満とする場合には、三・三平方メートルに当該宿泊者の数を乗じて得た面積)以上であること。
二 階層式寝台を有する場合には、上段と下段の間隔は、おおむね一メートル以上であること。
旅館業法施行令 第1条第2項(e-Gov法令検索)

2段ベッドの上下の間隔が「おおむね1メートル以上」。国が数字で決めているのは、こういう部分です。カプセルホテルやホステルの寝床が窮屈すぎないのには理由がある、ということになります。
1メートルという数字は、座ったときに頭がつかえない高さの目安と考えると分かりやすくなります。横になるだけでなく、中で身を起こせることが前提になっている、という読み方ができます。
ホテルの客室は「寝台を置くなら9㎡以上」
旅館・ホテル営業のほうにも、広さの基準があります。
一 一客室の床面積は、七平方メートル(寝台を置く客室にあつては、九平方メートル)以上であること。
旅館業法施行令 第1条第1項(e-Gov法令検索)
ベッドがある客室なら最低9㎡。予約サイトで「11㎡」「13㎡」といった表示を見かけますが、これは下限すれすれではないということが分かります。逆に9㎡台の表示があれば、法令の下限に近い部屋だと読めます。
同じ条文には、入浴設備・洗面設備・便所・換気・採光といった項目も並びます。いずれも「適当な規模」「適当な数」といった書き方で、具体的な数値は都道府県の条例に委ねられているのが特徴です(第1条第1項第8号)。同じ基準でも地域によって差が出るのは、このためです。
実際の広さの感覚はホテルのツインとダブルの違いは?実際の部屋で広さ・ベッド幅・料金を比べましたで実測しています。
そのほかの呼び名は法律上どこに入るか
| 呼び名 | 法律上の位置づけ | 補足 |
|---|---|---|
| ホステル・ゲストハウス | 簡易宿所営業にあたることが多い | ドミトリー(相部屋)が中心なら「多数人で共用」に当たります |
| ユースホステル | 同上 | 会員制の宿泊施設として運営されてきた形態です |
| 旅館 | 旅館・ホテル営業 | 2018年の法改正で、ホテル営業と旅館営業が1つに統合されました |
| 民泊(住宅宿泊事業) | 旅館業法の外 | 住宅宿泊事業法という別の法律で運営されます |
とくに民泊は、根拠になる法律そのものが違います。営業日数の上限など、旅館業法にはない制約がかかる一方、旅館業法の基準は適用されません。「ホテルと同じルールで運営されている」と考えると読み違えます。
「産後ケアホテル」のように新しい呼び名も増えていますが、宿泊料を受けて寝具を使わせるなら、どこかの区分に入って許可を受けているのが原則です。
結局、どう選べばいいか
名前に共通の定義がない以上、選ぶときに見るべきものは決まってきます。まず客室の広さ(㎡)。「ビジネスホテル」でも広い部屋はありますし、その逆もあります。
次にベッドの幅(cm)です。2人で泊まるなら、部屋の広さより1人あたりの寝る幅のほうが快適さに直結します。ダブルベッド1台なのか、シングル2台なのかで体感は大きく変わります。
そして個室か共用か。ここは簡易宿所かどうかの分かれ目でもあり、料金差の理由でもあります。最後に浴室が室内か共同か——これも料金を左右する大きな要素です。
よくある質問
この記事の出典
- 旅館業法(e-Gov法令検索) 第2条
- 旅館業法施行令(e-Gov法令検索) 第1条
※呼び名ごとの一般的な使われ方については、公的な定義が存在しないため、法令にもとづく記載と区別して示しています。


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