ホテルのタオル、持って帰っていいのか。汚してしまったら弁償なのか。フロントで聞くほどでもないけれど、なんとなく気になる——そういう疑問です。
ネットで調べると「だいたい大丈夫」「常識で考えて」といった書き方が並びますが、それでは判断できません。この手の話は、根拠になる条文がはっきりしているので、そこを見たほうが早く片づきます。
この記事は、刑法の条文と、国が示すモデル宿泊約款を確認し、書かれているとおりにまとめたものです。相場や「一般的にはこうする」といった出典のない目安は書いていません。
タオルはホテルの持ち物です。持ち帰れば刑法235条の窃盗にあたりうる行為で、条文には十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金と書かれています。
汚した・破いたときは、モデル宿泊約款18条により故意または過失があれば賠償という組み立てになります。持ち帰ってよいものの線引きは、施設が掲示する利用規則で決まります(約款10条)。
連泊中の交換ルールも施設ごとです。約款9条は「到着日と出発日を除き終日使用できる」と定めるだけで、清掃頻度についての全国共通のルールはありません。
持ち帰りは「気まずい」ではなく法律の話になる
タオル・バスローブ・ドライヤー・スリッパ(布製)などは、次の宿泊者も使うホテルの備品です。宿泊料金に含まれているのは「使う権利」であって、所有権が移るわけではありません。持ち帰れば他人の物を持ち去ったことになります。
(窃盗)第二百三十五条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
刑法 第235条
条文には金額の下限がありません。数百円のフェイスタオル1枚でも、条文の上では成立しうる、ということです。実際には請求や再発防止で済むことが多いとしても、「バレなければ大丈夫」という種類の話ではないという位置づけになります。
もう一つ知っておきたいのは、ホテル側は在庫を数えているという点です。リネンは枚数を管理して洗濯業者とやり取りしているため、なくなれば分かります。気づかれないと思っているのは客側だけ、というのが実情に近いところです。
では、持ち帰ってよいものは何で決まるのか
判断の物差しは「使い切りとして提供されているか、繰り返し使うために置かれているか」です。そして最終的にどちらに当たるかは、施設が定めるルールで決まります。モデル宿泊約款はこう定めています。
宿泊客は、当ホテル(館)内においては、当ホテル(館)が定めてホテル(館)内に掲示した利用規則に従っていただきます。
観光庁 モデル宿泊約款 第10条

つまり最終的な線引きは、法律ではなくそのホテルが掲示している利用規則にある、ということです。客室の机に置かれた案内や、扉の裏に貼られた注意書きがそれに当たります。
| 種類 | 考え方 |
|---|---|
| タオル類・バスローブ・ガウン | 繰り返し使う備品。持ち帰りの対象にならない |
| 使い切りのアメニティ | その滞在で使い切る前提のもの。扱いは施設の案内に従う |
| 判断に迷うもの | 客室の案内(サービスディレクトリー)かフロントで確認するのが確実 |
迷いやすいのは、歯ブラシやカミソリのように使い切りに見えて包装されているものと、スリッパのように使い捨てタイプと繰り返し使うタイプが混在しているものです。包装されているかどうかより、案内にどう書かれているかを見るほうが確実です。
汚した・破いたときはどうなるか
約款には、宿泊客側の責任を定めた条文があります。
宿泊客の故意又は過失により当ホテル(館)が損害を被ったときは、当該宿泊客は当ホテル(館)に対し、その損害を賠償していただきます。
観光庁 モデル宿泊約款 第18条

ポイントは「故意又は過失」という条件が入っていることです。裏を返せば、故意でも過失でもない損耗——つまり普通に使っていて生じる程度のこと——は、この条文の対象として想定されていません。タオルが少し毛羽立った、シーツにしわが寄った、といった話は日常の使用の範囲です。
境目になるのは、たとえば化粧品や整髪料の油分、市販の毛染め剤、絵の具やインクのように洗っても落ちないものを付けてしまった場合です。普通に使って落ちない汚れがついた場合と、これらとでは扱いが変わりえます。金額は施設の判断になるため、相場を示すことはできません(本記事では出典のない目安は書きません)。
実務的にいちばん確実なのはチェックアウト前に一言伝えることです。黙って帰るより話が早く済みます。清掃で見つかってから連絡が来るより、その場で状況を説明できるほうが、双方にとって手間がかかりません。
連泊中に交換してもらえるか
ここも施設ごとです。国のモデル宿泊約款が客室について定めているのは使用できる時間で、「連続して宿泊する場合においては、到着日及び出発日を除き、終日使用することができます」(第9条1項)とあるだけ。清掃やリネン交換の頻度についての全国共通のルールはありません。
エコ清掃(連泊中は交換しない代わりに特典がつく)を採用している施設もあります。飲み物券やポイントと引き換えに清掃を省く仕組みで、選べる形になっていることが多いところです。
交換してほしい場合は、清掃が入る前にフロントへ伝えるのが確実です。ドアに札を掛ける方式の施設なら、その札の指定に従います。連泊で3泊以上する予定なら、チェックイン時に清掃の入り方を聞いておくと、途中で戸惑わずに済みます。
よくある質問
この記事の出典
※弁償額や交換ルールは施設ごとに異なります。本記事は個別施設の運用を調べたものではありません。


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