ホテルのチェックインで身分証は必要?宿泊者名簿の決まりを法令で確認

ホテルのフロントと身分証を示す図解

チェックインで免許証の提示を求められる宿と、名前と住所を書くだけの宿があります。この違いは何なのか、そもそも身分証の提示は義務なのか——気になったので、法律の条文を確認しました。

この記事は、e-Gov法令検索で旅館業法と旅館業法施行規則の条文を実際に開いて確認し、書かれているとおりにまとめたものです(確認したページのURLは記事末尾に記載しています)。条文にない話は書きません。

法律が求めるのは名簿への記載で、身分証の提示は施設ごとの運用であることを示した図
法律が求めているのは名簿への記載で、身分証の提示は施設ごとの運用です
先に結論

法律が宿に義務づけているのは宿泊者名簿を備えて記載することです(旅館業法第6条第1項)。名簿に書く項目は氏名・住所・連絡先で、日本国内に住所がない外国人の場合はこれに国籍と旅券番号が加わります(施行規則第4条の2第3項)。

義務は宿の側だけではありません。営業者から請求があったときは、宿泊者はこれらを告げなければならないと第6条第2項に定められています。作成された名簿は作成の日から3年間保存されます。一方で、「身分証を提示せよ」という条文はありません。提示を求めるかどうかは、名簿の正確さを確保するための各施設の運用です。

提示を求めるかどうかは施設ごとに違います。予約前にプラン画面の案内で分かるので、先に確認しておくと当日あわてません。

目次

宿に課されているのは「名簿」の義務

旅館業法第6条は、宿泊者名簿についてこう定めています。

営業者は、厚生労働省令で定めるところにより旅館業の施設その他の厚生労働省令で定める場所に宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名、住所、連絡先その他の厚生労働省令で定める事項を記載し、都道府県知事の要求があつたときは、これを提出しなければならない。

旅館業法 第6条第1項(e-Gov法令検索)

条文が命じているのは、備えること・記載すること・求められたら提出することの3つです。誰に対して提出するのかも書かれていて、相手は都道府県知事です。宿が趣味で個人情報を集めているのではなく、法律で作成が義務づけられた記録だ、という位置づけになります。

続く第2項で、宿泊する側の義務も定められています。

宿泊者は、営業者から請求があつたときは、前項に規定する事項を告げなければならない。

旅館業法 第6条第2項(e-Gov法令検索)

つまり氏名・住所・連絡先を伝えるところまでは、宿泊する側の義務として法律に書かれています。「教えたくない」で通せる部分ではありません。フロントで記帳を求められるのは、施設が独自に決めたルールではなく、この条文にもとづく手続きだということです。

名簿に書く項目と、保存される期間

具体的な項目と扱いは、旅館業法施行規則第4条の2に書かれています。

法第六条第一項の宿泊者名簿(以下「宿泊者名簿」という。)は、当該宿泊者名簿の正確な記載を確保するための措置を講じた上で作成し、その作成の日から三年間保存するものとする。

旅館業法施行規則 第4条の2第1項(e-Gov法令検索)
宿泊者名簿に氏名・住所・連絡先を記載し、作成の日から3年間保存することを示した図
名簿に書く項目と、保存される期間が条文で決まっています

宿泊者名簿の記載事項(施行規則第4条の2第3項)
(スマホは横スクロール可)

スクロールできます
誰か書く項目
日本国内に住所がある人氏名/住所/連絡先(+都道府県知事が必要と認める事項)
日本国内に住所がない外国人上記に加えて国籍と旅券番号
※e-Gov法令検索の旅館業法施行規則の記載をもとに作成

ここが重要なところです。条文に並んでいるのは「書く項目」であって、「身分証を提示すること」ではありません。旅券番号の記載が求められるのは、日本国内に住所がない外国人の場合です。日本に住所がある人であれば、国籍や旅券番号は名簿の記載事項に含まれていません。海外に住んでいる日本人と、日本に住んでいる外国人とで扱いが変わる点も、条文が「国籍」ではなく「日本国内に住所がない外国人」という書き方をしているところに表れています。

保存期間の3年も具体的な数字として書かれています。宿泊した記録は当日で消えるものではなく、少なくとも3年は残る前提です。氏名・住所・連絡先という組み合わせは十分に個人が特定できる情報なので、扱いに気を配る施設が多いのもこのためです。

では、なぜ免許証を見せてと言われるのか

施行規則の同じ条文には、名簿を「正確な記載を確保するための措置を講じた上で作成し」と書かれています。書かれた氏名・住所が正しいことを確かめる手段として、身分証の確認を運用に組み込んでいる施設がある、という位置づけです。

言い換えると、「措置を講じる」の中身は条文で特定されていません。だから施設ごとに方法が分かれます。対面で免許証を確認する宿もあれば、予約時の情報と照合する宿もあり、記帳のみで済ませる宿もあります。

そのため、求められるかどうかは施設の方針によって変わります。カプセルホテルや無人チェックイン機の宿で提示を求められ、昔ながらの旅館では記帳だけ、といった差はここから生まれます。無人の受付機では人が目視で確認できないぶん、機械による身分証の読み取りに置き換えている、と考えると自然です。予約サイトのプラン画面や宿の公式サイトに「チェックイン時に身分証をご提示ください」と書かれている場合は、その施設のルールとして持参が必要です。

チェックイン前に確かめておくこと
(スマホは横スクロール可)

スクロールできます
見る場所分かること
予約確認メール身分証の提示を求める案内の有無
宿の公式サイトの「宿泊約款」「ご利用案内」本人確認の運用、代表者以外の情報が必要かどうか
予約サイトの「条件注意事項」チェックイン時に必要なものの記載
※記載がない場合でも、施設の判断で確認を求められることがあります

とくに確認しておきたいのが、大人4名で1室を取ったときのように、代表者以外の氏名も必要かどうかです。全員分の記入を求める施設では、同行者の住所と連絡先も聞かれます。当日その場で全員に確認して回るのは手間なので、事前に分かっていれば移動中にまとめておけます。

よくある質問

身分証を持っていない場合は泊まれませんか?

法律が求めているのは名簿への記載なので、身分証がないことだけを理由に一律で断られるとは限りません。ただし本人確認を条件にしている施設では断られることがあります。持っていない事情があるなら、予約前に施設へ電話で確認するのが確実です。

同行者全員の氏名も必要ですか?

条文は「宿泊者」の氏名・住所・連絡先を記載すると定めています。運用として代表者のみを記入させる施設もありますが、全員分を求められることもあります。求められた場合は、第6条第2項により告げる義務があります。4名で1室に泊まるようなときは、同行者の住所と連絡先を事前にまとめておくと受付が早く終わります。

書いた個人情報はいつまで残りますか?

宿泊者名簿は作成の日から3年間保存すると施行規則に定められています。都道府県知事から要求があったときは提出することも、旅館業法第6条第1項に書かれています。

偽名で書いたらどうなりますか?

第6条第2項は「告げなければならない」と定めており、虚偽の申告はこの義務に反します。さらに旅館業法第12条には、これに違反して偽って告げた者への罰則が定められています。くわしくはホテルに偽名で泊まれる?旅館業法に「偽って告げた者」への罰則がありますをご覧ください。

日本に住んでいる外国人もパスポート番号を書きますか?

施行規則が国籍と旅券番号の記載を求めているのは「日本国内に住所がない外国人」です。日本国内に住所がある場合は、氏名・住所・連絡先という他の宿泊者と同じ項目になります。ただし施設の運用として在留カード等の提示を求められることはあります。

この記事の出典

本記事の内容は、以下の条文を開いて確認した記載にもとづいています。法令は改正されることがあり、実際の運用は施設ごとに異なります。

※本記事は法令の記載を紹介するもので、個別のケースについての法的なアドバイスではありません。

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この記事を書いた人

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