予約画面には、意味を説明されないまま出てくる言葉があります。「デポジット」「フレキシブル」「素泊まり」「シングルユース」——なんとなく分かるけれど、正確なところは分からない。
やっかいなのは、これらが同じ重みの言葉ではないという点です。国の約款に定義があるものと、予約サイトが使っているだけのものが混ざっています。どちらなのかを見分けられると、条件の読み方が変わります。
この記事は、国(観光庁)のモデル宿泊約款を開いて確認し、条文に対応がある用語はその根拠を示しながら整理したものです。条文に根拠がない用語は、そのことも書きます。

デポジットは約款でいう「申込金」にあたり、上限は3日分までの基本宿泊料と決まっています。没収されるお金ではなく、宿泊料金に充当したうえで残れば返ってきます。
一方でフレキシブルは予約サイトの言葉で、条文には出てきません。中身はプランのキャンセル規定で決まります。
サービス料は約款の料金内訳に載っていますが、率の欄は空欄です。何%にするかは施設が決めます。
用語の意味が分かったら、あとは実際のプラン画面で条件を読むだけです。先に宿を探す方はこちらから。
デポジット(申込金)——上限と使いみちが条文にある
予約時や到着時に求められる「デポジット」は、約款上の申込金にあたります。金額の上限まで書かれています。
2 前項の規定により宿泊契約が成立したときは、宿泊期間(3日を超えるときは3日間)の基本宿泊料を限度として当ホテル(館)が定める申込金を、当ホテル(館)が指定する日までに、お支払いいただきます。
モデル宿泊約款 第3条第2項(観光庁)

10泊しても、申込金として求められるのは3日分までという設計です。長期滞在で全額の前払いを求められたら、この条文と照らして確認する余地があります。そして、そのお金がどう使われるかも次の項に書かれています。
3 申込金は、まず、宿泊客が最終的に支払うべき宿泊料金に充当し、第6条及び第18条の規定を適用する事態が生じたときは、違約金に次いで賠償金の順序で充当し、残額があれば、第12条の規定による料金の支払いの際に返還します。
モデル宿泊約款 第3条第3項(観光庁)

申込金が充当される順番
(スマホは横スクロール可)
| 順番 | 何に充てられるか |
|---|---|
| 1番目 | 最終的に支払うべき宿泊料金 |
| 2番目 | 解除したときの違約金 |
| 3番目 | 設備を壊したときなどの賠償金 |
| 残ったら | 返還されます |
順番が決まっている点が実務では効きます。まず宿泊料金に充てるので、普通に泊まって普通に帰れば、デポジットは支払いの一部として消えるだけです。
なお、申込金を求めないことにする特約も条文にあります(第4条)。デポジットを取る宿と取らない宿があるのは、この特約の有無ということです。
ホテルによっては、チェックイン時にクレジットカードで一定額を「仮押さえ」する運用もあります。これは約款上の申込金とは別の実務なので、金額と返還のタイミングはフロントで確認してください。カードの利用可能枠が一時的に減るため、旅行中に別の支払いを予定しているなら気にしておきたいところです。
フレキシブル——条文にはない、予約サイト側の言葉
「フレキシブルプラン」「フレキシブル料金」という表示があります。この言葉はモデル宿泊約款に出てきません。予約サイトや施設が、返金の条件がゆるいプランを指して使っている呼び方です。
約款には、プラン独自の条件が優先することを認める規定があります。
当ホテル(館)が、法令等及び慣習に反しない範囲で特約に応じたときは、前項の規定にかかわらず、その特約が優先するものとします。
モデル宿泊約款 第1条第2項(観光庁)
つまり「フレキシブル」と書いてあるだけでは、何日前まで無料かは分かりません。プラン名ではなく、その下にあるキャンセル規定の日付と割合を読んでください。逆に「返金不可」と書かれたプランも、この特約の一種です。
同じサイトの同じホテルでも、プランごとに条件が違うのはこのためです。「このサイトは前日まで無料」といったまとめ方は成立しません。
キャンセル規定の読み方はホテルのキャンセル料はいつから発生する?国のモデル宿泊約款と法律で確認にまとめています。
料金まわりの用語は「内訳」を見れば分かる
約款の別表第1が、宿泊料金の内訳の様式になっています。ここに出てくる区分が、そのまま用語の意味になります。
| 用語 | 意味 | 約款での扱い |
|---|---|---|
| 基本宿泊料 | 室料、または室料+朝食等の飲食料 | 別表第1の① |
| サービス料 | 基本宿泊料に対して加算されるもの | 別表第1の②。率の欄は空欄 |
| 追加料金 | 基本宿泊料に含まれない飲食など | 別表第1の③④ |
| 素泊まり | 食事を付けない予約のこと | 用語としては条文になし。上の①が室料だけの状態 |
ここでもサービス料の率が空欄です。国が用意しているのは枠だけで、何%にするかは施設が記入する——この構造は約款のあちこちに出てきます。10%を取る施設もあれば、そもそも設定していない施設もあります。
日本のホテルでチップが不要とされる理由も、この内訳と関係があります。くわしくは日本のホテルでチップは必要?宿泊料金の内訳と、渡したいときの方法で解説しています。
部屋・人数まわりの用語
この区分の用語には、業界共通の定義がありません。同じ言葉でも施設によって指すものが違うことがあるため、予約画面の説明を優先してください。
| 用語 | 意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| シングルユース | 2人用の部屋を1人で使う予約 | 料金が「1室あたり」か「1名あたり」かで総額が変わります |
| エキストラベッド | 部屋に追加で入れる寝具 | 部屋は狭くなります。定員に入るかと快適かは別 |
| ハリウッドツイン | ベッド2台をくっつけた配置 | ツイン扱いですが、2人で1つの寝面として使えます |
| デイユース | 宿泊せず日中だけ使う利用 | 約款第9条の「客室の使用時間」とは別枠のプランです |
部屋タイプの実際の広さとベッド幅はホテルのツインとダブルの違いで、デイユースの料金差はデイユースとは?宿泊との料金差を3軒で実測で、それぞれ実測しています。
手続きまわりの用語
逆に、手続きに関わる言葉は約款に対応する条文があります。トラブルになったときに参照できるのはこちらです。
| 用語 | 意味 | 約款での扱い |
|---|---|---|
| 不泊(ノーショー) | 連絡せずに来なかったこと | 宿泊客が解除したものとみなされる(第6条第3項) |
| 宿泊登録 | チェックイン時に氏名・住所・連絡先を記入すること | 第8条。旅館業法第6条にもとづく手続きです |
| 現地決済 | 宿泊当日に施設で支払うこと | 第12条第2項「宿泊客の出発の際又は請求した時」 |
| アーリーチェックイン/レイトチェックアウト | 使用時間の前後に部屋を使うこと | 第9条第2項に追加料金の様式があります |
とくに覚えておきたいのが不泊の扱いです。「行けなくなったから連絡しなかった」は、条文上は解除したのと同じ扱いになります。つまり違約金の対象です。連絡だけはしておくほうが得だ、という話になります。
よくある質問
この記事の出典
- モデル宿泊約款(観光庁) 第1条・第3条・第4条・第6条・第8条・第9条・第12条・別表第1
※「フレキシブル」「素泊まり」など、条文に対応する定めがない用語については、その旨を明記しています。実際の意味は各予約サイト・各施設の説明が優先します。


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